FAQとチャットボットとの違いは?それぞれの利点を解説

近年、カスタマーサポートなどで導入が進むチャットボット。 従来FAQが担っていた役割を、チャットボットが果たしています。

では、チャットボットはどんなケースでFAQに代わるシステムとして導入できるのでしょうか。 チャットボットとFAQを比較しながら、双方のメリット・デメリットについて説明します。

FAQとは

FAQ(Frequently Asked Questions)とは、多くのユーザーが疑問にもつ質問とその回答を集めたものです。 企業がFAQを導入する場合、カスタマーサポートの効率化や回答の品質を平準化するために使用されます。 FAQを充実させることで、ユーザー満足度が向上します。

FAQの用途は、コンタクトセンターでのオペレーターの回答支援等の内部利用と外部向けの公開FAQの2種類に大別されます。 内部利用では電話対応やメール作成を知識面でサポート、外部公開用では問題を抱えるユーザーに適切な回答を提示することで、ユーザーの満足度アップにFAQは貢献します。

FAQの構築や管理の面からみると、コンテンツの作成やメンテナンス、ユーザーに本当に役立つコンテンツか等が重視されます。 FAQの量を充実させてもキーワード検索で質問が発見されなければ、ユーザーの自己解決率が低下し十分な満足度は期待できません

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チャットボットがFAQと異なる点

チャット(会話)とボット(ロボット)の造語であるチャットボット。 会話や質問を文章で入力すると、ユーザーの言葉を判別し、適切な会話や返答を自動的に行なう対話型コミュニケーションシステムを指します。

チャットボットの中でも、FAQの代用になるのがFAQチャットボットです。 検索やカテゴリーからユーザーが解決したい質問を探す必要もなく、質問メッセージを入力するだけなのが特徴です。

FAQの場合、ユーザーが解決したい質問とシステムが用意した質問とが完全一致しないことがあります。 他方チャットボットは、管理者があらかじめ設定したキーワードからシステムが内容を判別、適切に返答します。

FAQのメリット・デメリット

まず、FAQのメリットとデメリットから確認しましょう。

FAQのメリット

メリット1:質問・回答の量の充実が容易

FAQのメリットは、質問と回答の量を充実させるのが容易な点です。 システムを管理する側が質問や回答を用意し、更新するだけです。 仮にユーザーが解決したい質問や回答が漏れている場合でも、メールフォーム等に誘導するなど代替手段の用意で対処できます。

メリット2:長年慣れ親しんだシステム

FAQは長年カスタマーサポートの手段として慣れ親しまれました。 ユーザーが使用法をある程度理解しているので、質問事項があればFAQを確認する習慣が身についていることも多いでしょう。

FAQのデメリット

デメリット1:解決したい質問への到達が困難

ユーザーの立場からみると、FAQで検索しても解決したい質問に到達しにくい点が挙げられます。 FAQの量が膨大になるほど、この傾向は強くなります。

デメリット2:システムの質向上に費やされる時間と労力の量

質問と回答の量を充実させやすい一方で、質問と回答をいかに収集するか、カテゴリー分けをどうするか、探しやすいFAQを作れるかといった質の充実の問題が挙げられます。 FAQシステム管理者はユーザーの意図や要望をWeb上の行動履歴から類推する必要があり、FAQの質の向上には時間がかかります。

チャットボットのメリット・デメリット

FAQのデメリットを補完するのがチャットボットです。

チャットボットのメリット

メリット1:解決したい質問に容易に到達

ユーザーが行なうのは、メッセージボックスへの会話や質問の入力だけです。 仮にユーザーの質問があいまいでも、チャットボットが連続対話によって質問を深堀りし、回答候補を絞り込むことで、精度の高い回答への到達が可能です。

中には、質問の選択肢をあらかじめ用意した分類型のチャットボットもあります。 また、選択肢から質問をクリックするか、選択肢にない場合にはボックスに質問や会話を入力できる併用型のチャットボットもあるなど、国内だけでも幅広いチャットボットが提供されています。

メリット2:検索の煩わしさから解放

検索の煩わしさから解放されるのも、チャットボットの利点のひとつです。 FAQから解決したい質問をキーワード入力で検索しても、質問が複数表示され、ユーザーが1個ずつ確認する煩わしさがFAQにはあります。 また検索しても該当する質問がない場合には、キーワードを変えて再度検索することも起こりえます。 チャットボットでは、会話や質問が入力されるとシステムが自動判別するので、面倒な検索操作が省略できます。

メリット3:チャット文化の浸透

Facebook MessengerやLINEなどのSNSにチャット機能が搭載されるなど、チャット文化が浸透してきました。 チャット慣れした世代にとって、FAQからチャットボットへの移行は難しくありません。 SNSのような会話を心がければAIが自然に返答するため、ユーザーの満足度も高くなります。

メリット4:気軽にできる質問が生む相乗効果

チャットボットは簡単に行なえるコミュニケーションツールであるため、FAQでは調べないような軽微な質問でも、気軽に行なえます。 質問が増えることでユーザーの接点も増え、結果として満足度もアップします。

またチャットボットを管理する側からみても、想定しなかった質問が届くことでさまざまな相乗効果が期待されます。 外部公開用ならば顧客マーケティングに、内部で利用する場合でも社内業務の改善に役立てることが可能です。

とはいえ現状では、チャットボットにも弱点があります。

チャットボットのデメリット

デメリット1:言語認識の壁

ユーザーの会話や質問を判別するのにチャットボットにAIが導入されるケースが増えています。 その一方で日本語の場合、表記のゆれなど英語にはない複雑さがあります。 個別事例を挙げると、IBMのWatsonがチャットボット構築システムを提供していますが、英語程のパフォーマンスを日本語では達成されていないという指摘もあります。

デメリット2:不適切な学習

またスパムや悪意のある発言などをAIが学習すると適切に返答できない問題が、機械学習型のチャットボット一般にいえます。 FAQチャットボットを内部利用する場合、そのリスクは低いですが、学習させる会話データの質や量がチャットボットの精度を高めるといっても過言ではありません。 ユーザーが煩わしいと感じるチャットボットが構築されれば、満足度は低下します。

ユーザー満足度を上げたいならチャットボット

FAQには、長年慣れ親しまれたシステムという特徴があります。 その一方でユーザーや管理者に負担をかけるシステムなのも事実です。 質問や回答数が少ない場合には、FAQの方がシンプルかもしれません。

しかしシステムが巨大化する場合にはチャットボットがベターです。 チャット文化が浸透した現在、FAQからチャットボットへの移行もユーザーに苦にはならないでしょう。 またシステム管理者にとってもチャットボットの質・量を自動的に向上させられるなど、ユーザー満足度の高いシステム作りが可能です。