チャットボット導入わずか3か月で問合せ数15%減に成功!グングン効率化が進むAIヘルプデスク運用の秘訣とは?(株式会社資生堂)

株式会社資生堂では、2019年7月より『My-ope office』を導入しました。
今回は株式会社資生堂 人事部のみなさんにチャットボット導入の経緯や導入後の変化などについてお話を伺いました。
(左:人事部:村山さん 中央:人事部:柴田さん 右:アステック社 田辺さん)

会社概要

株式会社資生堂は1872年日本初の民間洋風調剤薬局として東京・銀座で創業し、現在では約120の国と地域で事業を展開しています。
株式会社アステックは資生堂の関連会社であり、資生堂グループの人事手続を担当しています。

課題

人事では社員からの人事関連の問合せ対応の量と質を改善したいと考えていました。
これまでの同社での社員からの問合せにおける課題は、大きく分けて3つ、1つは問い合わせをする社員側、2つは問合せを受ける人事側にありました。

【社員側】

①人事への問合せ時間
社員が人事へ問い合わせるためには、メールや電話を使用します。
ただし、メールの場合は人事からの回答を受領するまでに待ち時間が発生し、電話の場合は、特に店頭や工場で勤務する社員にとっては、電話をかけるタイミングなどに制限が発生してしまいます。

人事では、社員がフラストレーションを感じることのない社員対応をしたいと考えていました。

【人事側】

②問合せ数の多さ
年末調整などのイベント時期での社員からの問い合わせ数は非常に多く、それに1件ずつ回答することに時間を要していました。
人事側では異なる質問者(社員)へ同じ回答を何度も繰り返すことが多くあり、順番に回答しているため、質問のタイミングによっては社員を待たせてしまうこともありました。

この状況を打破し、問い合わせをした社員に対して一貫した回答をタイムリーに提供することで、人事がより丁寧に対応すべき内容へ時間を割き、本質的なEmployee experienceの向上に注力したいと考えていました。

③問合せ内容の把握
メールや電話での問合せは、記録として一元管理されていませんでした。
そのため、社員がどのようなことについて問合せをしているのか全体を把握できず、改善につなげることができていませんでした。

この状況を打破するために、社員が問い合わせすることなく自己完結できるような仕組みをつくり、社員からの質問データを分析することで、社員によりわかりやすい社内アナウンスを実施したいと考えていました。

株式会社資生堂が導入したAIチャットボット「My-ope office」

対象となる社員は、日本全国にある資生堂およびグループの子会社10社に所属する19,000人が対象であり、人事部・アステック社は電話やメールにて都度対応していました。

「社員へタイムリーに一貫した回答を提供したい人事部・アステック側」と「質問への回答をすぐに得ることができない社員側」の両方の問題を解決するためにAIチャットボットの導入を決めました。

My-ope officeを選んだ理由

弊社の別部署ですでに「My-ope office」を導入しており、シンプルでわかりやすい仕組みを事前に知っていたことがきっかけです。

弊社では、新しいサービスを使った取り組みがとても活発です。
今回の課題を解決するため「My-ope office」は最適でした。

まず、QA登録・修正機能がシンプルであり、すべてチームメンバー内で運用できるため、ベンダーへ依頼する時間や追加コストが発生しないことや、もともとダッシュボードが装備されているため、社員からの問い合わせ内容の全体像を把握することが簡単であることは非常に魅力的です。

また、導入および運用のための料金設定も非常にリーズナブルであったため、コスト面を心配することなく、継続することができると考えました。

チャットボットを社員に知ってもらうための工夫

社員にチャットボットの存在を知ってもらうために、チャットボット用のキャラクターを作り、更に家族構成や好きなものなどのキャラクター設定をすることで、単なる回答のためのツールではなく、多くの社員に親しみながら話しかけてもらえることを目指しました。

キャラクターの設定には、人事部内でキャラクター案を公募し、投票の結果「キャロ&ライン」という双子のにんじんのキャラクターが生まれました。

株式会社資生堂のAIチャットボットキャラクター「キャロ&ライン」

チャットボットでは「キャロ&ライン」が回答をしますが、テキストメッセージは冷たく見えがちなため、あまり固い回答とならないように、フレンドリーな口調に統一しています。

「人事でもこのキャラクターにとても愛着を持っています。私たちもこの子たちが上手に回答できるように、楽しみながら育てています。」と柴田さんは語ります。

株式会社資生堂 社員

キャロ&ラインは「こんにちは!」と書けばいつでもフレンドリーに返事をして、好きな食べ物や家族についても答えることができます。

真面目な問い合わせに対応することはもちろん、社員が楽しんでもらうこともできるようにと、すこしずつ楽しいQAも増やしています。

好物の最中について説明しているAIチャットボット

社員には、キャロ&ラインの育成への協力を呼び掛けており、キャロ&ラインが回答を間違えたときには「間違えている」ことを、合っているときには「合っている」ことを、教えてもらうようにお願いしています。

この呼び掛けもあり、キャロ&ラインの回答結果の質がダッシュボードによりクリアに反映されるようになり、人事も質や問題を把握し、改善につなげることができるようになりました。

Good評価を押されたチャットボットの回答

Bad評価を押されたチャットボットの回答

導入後の成果

お問い合わせ内容には「通勤交通費の変更手続きの方法について」や「保育園に提出する勤務証明書の発行依頼」が多くありましたが、チャットボットの導入から幾分か問い合わせ対応数が減りました。

「まだチャットボットを本格稼働させて3ヶ月くらいですが、「勤務証明書」の問い合わせは前年度から15%減少しており、手応えを感じています。」と田辺さんは話します。

AIチャットボット導入後、3ヶ月間の問い合わせ数が79件削減

「通勤費の変更手続き」に関するお問い合わせ件数は前年度の3ヶ月は691件でしたが、チャットボットを導入した今年度は612件に減っています。
79件しか減っていないとはいえ、対応時間は削減されました。

株式会社資生堂 社員

人事の対応時間数で考えると「勤務証明書関連の問い合わせ」では、1つの質問に対して10分を要するものとすると、1年間で約220時間の削減が見込まれます。

今後、チャットボットが回答できる範囲を広げ、社員へのアナウンス内容や、チャットボットでの回答内容を改善することで、問い合わせ件数・対応時間数は更に削減でき、その結果、これまでよりも多くの事業所や部門の社員に対応する時間を確保できるものと考えています。

また、チャットボットを導入して気づいたこともありました。

「チャットボットのダッシュボードでよく聞かれている質問を確認してみると、“今年度の営業カレンダーが見たい”、“給与明細の確認方法が知りたい”などの基本的な情報について質問している社員が多いことに気づきました。」と村山さんは話します。

株式会社資生堂 社員

別途構築を進めている人事のポータルサイトがあるため、チャットボットへ社員がよく質問している項目はそのポータルサイトの中で目立つ場所に配置したり、アナウンス方法を工夫することにしました。

この気づきをとおし、これまでの一方通行の発信から、社員からの声を反映した双方向のポータルサイトになると考えています。

なお、チャットボットは匿名で質問できるように運用しているため、上司や人事に直接聞きにくいことや、誰かに相談するときの宛先なども誰にも知られずにチャットボットから回答を得ることができるので、今後、社員が人知れず困ったときの助けとなるような内容も拡充していく想定です。

チャットボット導入後、問い合わせ数は減少傾向にあり、今まで気づかなかった「社員が知らないこと」「本当に知りたいこと」が把握できるようになりました。

今後も、チャットボットでの問合せ内容を分析することで、社員が問い合わせせずセルフサービスで完結するためのヒントを得たり、アナウンスの不足している事柄を把握するなどの、さらなる「気づき」が生まれること、それを継続的なプロセス改善へ活かし、社員へよりフラストレーションフリーのサービスを提供することを期待しています。