業務効率化を進め生産性を向上させるアイデア。手順やツールも紹介

業務効率化は、会社のマネジメント層が主導し、組織レベルで取り組むべき課題です。
コストの削減や従業員のモチベーションアップにつながり、生産性の向上を期待できます。

業務効率化の手順や、役立つアイデア・ツールを紹介します。

業務効率化について知ろう

ビジネスバッグと新聞
全社を挙げて取り組むことが求められている、業務効率化の目的を確認しておきましょう。
生産性向上との違いも解説します。

業務効率化とは


会社の業務から無駄をなくし、よりスムーズに作業を進められる環境に改善することが、業務効率化です。
国が推進する働き方改革では、『長時間労働の解消』『正規・非正規社員の格差是正』『多様かつ柔軟な働き方の実現』を3本柱に掲げています。

中でも、労働時間の是正は、業務効率化と大きく関わる課題です。
長時間労働が原因で、従業員のメンタル面に大きな悪影響を及ぼすことが指摘されています。

業務効率化により、社内のさまざまな無駄を省くことで、労働時間の短縮や人件費などの経費削減につなげることが期待できます。

生産性向上との違い


働き方改革では、業務効率化と併せて、労働の多様性や生産性向上といった目標も掲げられています。
しかし、業務効率化と生産性向上は、厳密には同じ意味ではありません。

生産性向上とは、保有する経営資源を有効活用し、最小限の投資で最大限の効果を発生させることです。
生産性向上を目的とするなら、業務効率化は手段ということになります。

働き方改革においては、物理的な労働生産性を高めること以上に、「付加価値÷労働時間」で求められる付加価値労働生産性の向上をより強く求められています。

労働時間当たりの付加価値を高めるには、労働時間を短縮しなければなりません。
業務効率化こそが、付加価値労働生産性を高め、ひいては生産性を高めることにつながります。

業務効率化を図るメリット

電卓をうつ女性の手
業務効率化に成功すれば、どのようなことが実現されるのでしょうか。
期待できる主なメリットを紹介します。

コストや負担の軽減


業務効率化で期待されるメリットの一つに、労働時間の短縮が挙げられます。
従業員の勤務時間が減少することにより、人件費・光熱費などのコストを削減することが可能です。

一部の業務を外部に依頼できれば、その業務で発生していたさまざまな経費をカットできるでしょう。
依頼費用を抑えられれば、経費削減につながります。

従業員の身体的な負担を軽減できることも、業務効率化のメリットです。
無駄を省き、労働時間が減ることにより、従業員の疲労がたまりにくくなります。

従業員の満足度や信頼性の向上


業務効率化は、従業員のメンタル面にも好影響を与えることが期待されています。
休日出勤や残業が減れば、プライベートに充てられる時間が長くなり、仕事と生活のバランスを重視する従業員の満足度を高められるでしょう。

労働時間の削減に併せて、福利厚生などの社内制度を整備すれば、従業員の勤労意欲も向上します。
労働の価値や質が問われている現在において、非金銭報酬である福利厚生の充実は、会社に対する信頼性を高めることにもつながります。

業務効率化で従業員の仕事に対する意識を高めることは、会社の持続的な成長に欠かせない、優秀な人材の離職防止にも有効です。

業務効率化の手順

机の上でノートをとる人々
業務効率化は、それぞれのプロセスを見直し、再構築することで、全体の効率化を図るという考え方に基づいて行われます。
大まかな流れを理解しておきましょう。

現状を正確に把握する


最初に、現状の業務がどのように進められているか、実態を正確に把握することが重要です。
図解を用いるなどして業務フローを見える化し、誰が見ても理解できるように客観性のある資料にすれば、問題点を捉えやすくなります。

社内のマニュアルなどを参考にするだけでなく、実際に現場で業務に携わっている従業員にヒアリングを実施し、具体的な作業内容や現実的な問題点などを洗い出しましょう。

フロー作成の際は、開始場所や業務の流れが分かりやすいものにしなければなりません。
条件分岐を明確にしたり、プロセスごとに要する時間を明記したりすることも大事です。

改善対象を特定する


業務効率化の重要な目的は、業務における無駄の排除です。
時間が掛かる原因として考えられるプロセスをフロー内から特定し、改善を試みなければなりません。

ミスややり直しの頻度が高いプロセスは、優先的に着手しましょう。
エラーが発生する原因を特定し、試行回数を減らすことで、全体の効率を上げられます。

流れが滞りやすいプロセスがあれば、次工程で実施可能な代替案がないか検討するのも一つの方法です。
待ち時間が短縮され、よりスムーズな流れへ改善できます。

各プロセスで要する時間をできるだけ抽出し、バラつきの大きいプロセスがあるなら、改善対象となります。
常時平均値に近くなるような改善策を検討する必要があるでしょう。

手段を検討する


業務効率化で用いられる手法に、『ECRS』と呼ばれるものがあります。

・『排除』(Eliminate)
・『結合と分離』(Combine)
・『入れ替えと代替』(Rearrange)
・『簡素化』(Simplify)


以上のの4単語から、頭文字をとって並べた言葉です。
四つの視点から改善策を考慮するこのフレームワークは、改善策が過剰・過小になりにくく、トラブルも発生しにくいことから、適用すれば大きな効果が得られるでしょう。

改善策として最初に考えるべき視点は排除です。
カットしても問題がなければ、大きな効率化につながります。
複数の類似業務があれば、結合が効果的です。

排除や結合・分離ができなければ、作業場所や人員などの入れ替えを検討しましょう。
全て無理なら、簡素化しても役割を果たせるかどうかを検討します。

検証と評価サイクルを回していく


改善策をひと通り施し、新たなフローで業務を再開した後は、滞りなく業務が遂行されているかの検証と、期待通りの効果が得られているかの評価を行います。

手を加えたプロセスの所要時間や作業のクオリティなどを個別にチェックするとともに、ほかの工程に与える影響を確かめたり、全体の流れを俯瞰したりする作業も重要です。

どこかに問題が発生しているようなら、ピンポイントで対策を検討します。
全体的な不具合が生じていれば、改めて策を練り直す必要もあるでしょう。

実際に運用してみなければ発見できない問題も少なからずあります。
トライアンドエラーを繰り返し、理想の形に近付けていく作業までが、業務効率化のプロセスです。

業務効率化のためのアイデア

パソコンの前で考えごとをする男性
業務効率化は、専門的な知識を備えていた方が有利な場合も多く、本業の片手間で実施できるような簡単なものではありません。
自社で業務効率化を実行する際、より確実に成功へ導くためのコツを以下に紹介します。

アウトソーシングを活用する


業務効率化を自社で実施する場合、担当者がそれなりの時間を必要とするため、本業に支障をきたしかねません。
また、業務効率化を進めていく中で求められる知識やスキルも多く、担当者が未経験者なら手法などを勉強しなければならないでしょう。

できる限り本業に集中しながら進めたい場合は、アウトソーシングの活用がおすすめです。
一切の業務を外部のプロに委託することで、成功する可能性も飛躍的にアップします。

外注コストが気になる場合や、自社の情報が外部に知られることを避けたい場合は、専門家によるコンサルを受けてみるのも良いでしょう。

専門システムを導入する


自社で業務効率化を進めたいなら、システムの導入も検討してみましょう。
業務効率化に特化したシステムをパッケージ化したサービスが、多くの会社から提供されています。

あくまでも既成のシステムであるため、アウトソーシングやコンサルと異なり、自社の業務へ柔軟にマッチした仕組みの構築はできません。
しかし、さまざまなシステムの中から、自社の目的や環境に合ったものを選べば、細かくカスタマイズすることで使いやすさはかなり向上するでしょう。

導入コストを抑えられることや、準備期間に多くの時間を必要としないことも、専門システムを導入するメリットと言えます。

ツールやテクノロジーを活用する


担当者が業務効率化の進め方を理解している場合は、ツールやテクノロジーを活用することで、さらに効率よく各プロセスを実行できます。
現状の業務内容や流れを正確に把握し、自社の業務効率化に適したツールやテクノロジーを選択することが重要です。

アウトソーシングやシステムの導入に比べ、大幅にコストを削減できます。
効率化するポイントを正確に特定できれば、さらに費用を抑えられるでしょう。

関係各所に使い方を周知徹底させる必要があるなど、担当者に負担がかかりやすいことはデメリットと言えます。
しかし、コストを抑えながら自社に最も適したシステムを構築できることは魅力です。

業務効率化に役立つツール

パソコンを操作する男性の手
業務効率化に利用できるツールは、種類豊富に提供されています。
多くの現場で選ばれている、代表的なツールのジャンルを紹介します。

コミュニケーションやファイル共有ツール


業務効率化には、社内のスムーズなコミュニケーションが不可欠です。
担当者からの周知連絡や関係各所間の連絡が円滑に行われれば、大幅な時間短縮につながります。

ビジネスチャットツールや社内SNSなどを活用し、業務連絡の活性化や簡素化を意識しましょう。
クラウド上で利用できるファイル共有ツールや、データ保存に役立つオンラインストレージも、情報管理を一元化できる便利なツールです。

時間や場所を問わず、誰でもデータにアクセスできる環境を整えることで、社内だけでなくクライアントとのやり取りも効率化できます。

ワークフローやプロジェクト管理ツール


意思決定のプロセスである社内決裁業務は、クラウド上で行えるワークフローツールを導入することで簡略化できます。

業務効率化を妨げる大きな要因の一つとして、決裁が下りるまでにかなりの時間を要することが挙げられるでしょう。
ツールを活用すれば、この問題を解消できます。

各プロセスを可視化し、メンバー全員でタスクを共有できる、プロジェクト管理ツールも有効です。
管理者を設定すれば、プロジェクトやタスクの状況がひと目で分かり、タスク漏れなどのリスクも防止できます。

RPAツール


RPAツールとは、主にデスクワークなどの単純処理作業を自動化できるツールです。
業務効率化に活用できるツールとして、近年注目を集めています。

オフィス業務をソフトウエアが代行してくれるため、マンパワーの大きな削減につながることや、人的ミスを防止できることがメリットです。

動作を1度覚え込ませれば、マクロ的に同じ作業を繰り返してくれます。
ホワイトカラー業務における人材不足の解消にも、一役買ってくれるでしょう。

購買・経理・人事など、業務を選べばさまざまな部署で導入できます。
あくまでも人をサポートする存在であることを理解し、うまく活用することがポイントです。

ツールの選び方

カウンターでノートパソコンをいじる男性
業務効率化に使用するツールは、さまざまな特徴や機能を備えています。
どのような点に着目すればよいのか、選ぶ際に注意したいポイントを押さえておきましょう。

自社ニーズを満たすか


便利そうだと思ったツールをやみくもに導入しても、ツールに振り回されるだけの状況になりかねません。
自社の業務に関する状況を的確に把握し、必要性のあるツールのみ導入することが重要です。

また、人が上手に活用できて初めて、ツールを導入する意味があると言えるでしょう。
業務に携わる従業員にツールの必要性を確認し、「実際に使いこなせるのか」という部分までリサーチする必要があります。

使いやすさやセキュリティ


ツールの良さは、実際に使用してみなければ分かりません。
無料試用期間を設けているツールも多いため、まずは実際に使いやすさをチェックしましょう。

業務に必要であるかどうか、使う人との相性はどうかなどを確認し、効率化につながることが確認できた時点で、本格的な導入を検討することが大事です。

クラウドツールを導入する場合など、外部にアクセスする機会が多くなるケースでは、セキュリティ対策も万全に施しておく必要があります。
企業規模が大きくなるほど、個人情報漏えいなどにより受けるダメージも大きくなります。
ツールを選択する際は、セキュリティ対策が強固なものかどうかも確認しましょう。

まとめ


業務効率化は、社内の業務から無駄を省き、作業時間を短縮できる環境に改善するためのプロセスです。
コストや負担を削減し、従業員の満足度を高められるメリットがあります。

業務効率化の手法としては、アウトソーシングの利用やシステムの導入、ツールの活用が挙げられます。
自社の状況や担当者のスキル、使えるコストなどを考慮し、効率化したい業務に適した方法を選択しましょう。